2022年3月よりSOMPO美術館で開催中の「シダネルとマルタン展」へ行ってきました!
詩情が心に染み入るシダネルと、明瞭で生命感のあるマルタンの、2人に焦点を当てたこの展覧会。
穏やかな優しさがじんわりと染み入っていて、帰る頃には心が潤っているのを感じました。
以下、シダネルとマルタン展の見どころや混雑状況、所要時間、チケット情報のまとめです。
一個人の感想ですが、これから行こうか迷っている方、行こうとしている方のお役に立てれば嬉しい限りです。
新型コロナウイルス対策のため会期等が変更されている可能性があります
訪問前に必ず公式情報をご確認ください
ここが見どころ!
まずは本展の見どころを2点に絞ってご紹介します。
ネタバレしすぎないように、展示会場の写真等は載せていませんが、内容は極力知りたくない!という方は「混雑状況」の項目から読んでいただくとよいと思います。
見どころの2点はこちらです。
- 似ているようで違う2人の作品を同時に鑑賞できる
- ただ見ているだけでも満足できる
それでは詳しくご紹介しますね。
似ているようで違う2人の作品を同時に鑑賞できる
シダネルとマルタンの作品は、国立西洋美術館など見られる場所は日本にもありますが、約70点という数が集まる機会はそうありません。
日本での知名度は高くはないものの、近年ヨーロッパを中心に再評価の気運が高まっているので、今本物をたくさん目にするのは後にも生きてくるような貴重な経験になりそうです。
似ているようで違う作風の2人の絵画をたっぷりと見られるのも、本展の面白いところだと感じました。
彼らは、活躍した年代、光を描く「印象主義」の流れを受け継いだこと、粗く細かい点のような筆致で描いたことなど共通点があり、作風は比較的似ていると言ってよいでしょう。
見慣れないうちは区別がつきづらい程かもしれません。
ですが、展示室を進んでいけば、徐々に違いが分かるようになるはずです。
もちろん、単純に作品の味わいをかみしめるのも楽しいのですが、「どういうポイントが作品の印象の違いを作るんだろう?」と理屈っぽく考えをめぐらせるのも、ひとつの面白さかなと思いました。
ただ見ているだけでも満足できる
美術作品には大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは、知識があった方が楽しみやすいタイプ。
例えば、マルセル・デュシャンの《泉》は、既製品をあえてほぼそのまま「作品」にすることで、「作品」の意味を問い直した点に意味があるわけですよね。
パッと見はただの小便器なので、便器メーカーの関係者でもなければ、造形的に興味を引かれることは稀でしょう。
ここまで極端でなくても、例えば国王の肖像画などは、その人物の所業や後世での扱われ方を知っていた方が味わい深くなったりします。
宗教画も、何のシーンか分かった方が、鑑賞しやすいジャンルですよね。
シダネルとマルタンの作品は、そういった知識に乏しくても楽しみやすいと言えるでしょう。
確かに、印象主義や点描技法の発展の歴史など、知識を使った楽しみ方もできます。
が、なんにも考えずにぼやーっと眺めていても、味わいが染み出てくるのです。
前述のように、2人の作風の違いがどこから来るのかを考えるのも、知識不要の楽しみ方ですね。
シダネルの落ち着いた詩情。
マルタンの明るい生命感。
画面から伝わる直感的な味わいを肌で感じられる展覧会でした。
展示構成
章ごとにシダネルとマルタンの作品を明確に分けているわけではありません。
両者の作品がともに展示されている章もあります。
会場で実際に見ても、それぞれの作品がるやかにエリア分けされているような印象を受けました。
構成は以下の通り。
- 1. エタプルのアンリ・ル・シダネル
- 2. 象徴主義
- 3. 習作の旅
- 4. アンリ・マルタンの大装飾画のための習作
- 5. ジェルブロワのアンリ・ル・シダネル
- 6. ラパスティド・デュ・ヴェールのアンリ・マルタン
- 7. ヴェルサイユのアンリ・ル・シダネル
- 8. コリウールとサン・シル・ラポピーのアンリ・マルタン
- 9. 家族と友人の肖像
- シダネルとマルタンによる版画・素描
混雑状況
会期も終盤にさしかかった頃の、週末の夕方に行ってきた際は、そこまで混雑しているとは感じませんでした。
大きめの作品が多く、作品の間隔も広めにとられていたので、鑑賞者が密集する場面は少なかったと感じました。
基本的には、壁に掛けられた絵画を順番に並んで見ていくのですが、室内を見渡して人が少ない作品から見始めることもできました。
壁沿いにずらっと人が詰まる状態もあまりなく、混雑によるストレスは感じにくそうです。
ただし、これから会期末にかけて、午前中や土日は更に混雑する可能性もあるので、ぜひお早めにどうぞ。
所要時間
所要時間は、ショップを除いて1時間~1時間30分くらいが目安になりそうでした。
SOMPO美術館は以前、コロナ対策のためおおむね1時間以内の滞在をお願いしていましたが、今回は特段の時間制限はありませんでした。
1時間だとちょっと物足りなさそうなボリューム感だったので、嬉しいポイントです。
作品点数は約70点と、ものすごく多いわけではありませんが、大きい作品や時間をかけて見つめたい作品がたくさんあります。
あまり混雑しておらず、1点1点をゆったり堪能できるので、時間に余裕がある時の方がより味わいやすいでしょう。
チケット・事前予約
チケットは当日窓口でも購入できますが、オンラインで日時指定券を事前に買っておけます。
日時指定券の方がやや安く設定されていて、例えば一般だと1,600円が1,500円になっています。
各入場時間枠の1分前まで販売しているので、
「そうだ!これから行こう!」
と思いたって、とりあえず家を出て、電車で移動している最中に手続きを済ませてしまえば100円得するわけです。
なお、公式推奨の販売サイトは「アソビュー」で、コンビニのプレイガイド(e+など)でチケットを買った場合でも、日時指定は「アソビュー」で別途手続きが必要です。
プレイガイドの場合はキャンセルもできないので、公式推奨「アソビュー」にしておくのが無難です。
「アソビュー」での販売は20日前から受け付け開始。
キャンセルは入場日前日の23:59まで無料でできます。
予習におすすめの書籍
今回もまた、私の持っている書籍の中からご紹介しますね。
おすすめは、以前も紹介したことがある書籍、『すぐわかる画家別印象派絵画の見かた』です。
シダネルとマルタンは『最後の印象派』ということで、印象主義の作風が世の中で既に受け入れられていた時代の画家たちですが、定着までには保守派との猛烈な戦いをはじめとする数々の闘争がありました。
この「印象主義が認められるまでの歴史」を知っておくと、活動の早期から人気を博し、きちんと評価され作品も売れて、あちこちに別荘を買ったりしている2人の生涯が、ひときわ感慨深く感じられるはずです。
象徴主義のオディロン・ルドン、点描の始祖ジョルジュ・スーラまで網羅しているので、印象主義の系譜の全体像を知るのにはベストかと。
シダネルとマルタンについての記述は残念ながらありませんが、彼らに至る流れを知っておくのが、予習としては最適でしょう。
余談ですが、シダネルやマルタンに特化した日本語版の書籍は入手困難です。
近年再評価が進んでいる画家たちなので、今後の資料としても、本展の図録は買っておく価値があるでしょう。
SOMPO美術館も図録の通信販売をしていますが、申込書を郵送する必要があり面倒なので、現地で買うのが簡単です。
最後の印象派、二大巨匠
シダネルとマルタン展
SOMPO美術館
2022年3月26日(土)~6月26日(日)
展覧会公式サイト:https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2021/sidaner-martin/