国立新美術館で開催中の「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡 市民が創った珠玉のコレクション」へ行ってきました!
20世紀初頭から今日に至るまでの、多様で豊かなコレクションは圧巻の一言。
加えて、コレクションの形成・継承を市民が支えてきたことも興味深く、現代における美術の発展について考えるきっかけにもなりそうでした。
20世紀以降の美術が好きな人はもちろん必見。
敬遠しがちだけど近づきたいと思っている人にとっても、主要な様式・グループに触れられる絶好のチャンスです。
会期は9月26日までなので、迷っている方はぜひ訪れてみてくださいね。
以下、「ルートヴィヒ美術館展」の見どころや混雑状況、所要時間、チケット情報などをまとめました。
興味があるけれどまだ行っていない!という方の参考になれば嬉しい限りです。
新型コロナ対策のため会期等が変更されている可能性があります
訪問前に必ず公式情報をご確認ください
展示構成
20世紀初頭のブリュッケ・青騎士に始まり、ロシア・アヴァンギャルド、ポップ・アートなどの様々な表現を経て、今日の芸術へと発展していく流れが紹介されています。
現代美術らしく、油彩や彫刻の他、写真、立体、映像など、作品のジャンルは多種多様。
最後には映像による解説コーナーも設けられています。
構成は以下の通りです。
- 序章 ルートヴィヒ美術館とその支援者たち
- 1 ドイツ・モダニズム――新たな芸術表現を求めて
- 2 ロシア・アヴァンギャルド――芸術における革命的革新
- 3 ピカソとその周辺――色と形の解放
- 4 シュルレアリスムから抽象へ――大戦後のヨーロッパとアメリカ
- 5 ポップ・アートと日常のリアリティ
- 6 前衛芸術の諸相――1960年代を中心に
- 7 拡張する美術――1970年代から今日まで
ここが見どころ!
まずは本展の見どころを2点に絞ってご紹介します。
ネタバレしすぎないように展示会場の写真は載せていないので、その点ご承知おきください。
見どころの2点はこちらです。
- 20世紀美術を概観できる作品群
- コレクションを支える“市民”の存在感
それでは詳しくご紹介しますね。
20世紀美術を概観できる作品群
見どころの1つ目は、20世紀美術の全体を俯瞰させてくれるような充実のラインナップです。
ドイツ・モダニズム、ロシア・アヴァンギャルド、ピカソ、ポップ・アート等々・・・
ここを抜きに20世紀は語れない!という重要な様式や主義、作家等がバッチリ揃っているのです。
“珠玉のコレクション”の銘に偽りはありません。
これくらい様々な表現が一堂に会していると、20世紀美術が既に好きな人だけでなく、あまり馴染みがない人にも入門編としておすすめができます。
20世紀の美術は、作品自体だけでなく解説文すらも抽象的で、思想もバラエティに富んでいて、なかなか取っつきにくいところがありますよね。
(ありませんか?)
ですが、集まってきた多種多様な作品たちを見比べながら歩いていると、それぞれの特色や解説文の意味するところが何となく掴めてくるでしょう。
確かに20世紀美術はあまりに奥深いので、1つの展覧会、1冊の本で理解しきるのは不可能ですが、本展はかけがえのない入口になってくれるはずです。
20世紀の大きな流れを概観できる一大コレクションをお見逃しなく。
コレクションを支える“市民”の存在感
見どころの2つ目として挙げたいのは、コレクション形成に貢献した市民の存在です。
本展のラインナップの充実ぶりは先ほど書いた通りですが、展示作品は全てルートヴィヒ美術館の所蔵。
つまり、20世紀美術の主要な様式をひと通り貸し出せてしまうほどの圧倒的なコレクションが、ルートヴィヒ美術館にはあるのです。
では、美術館のコレクションの基礎は何に由来するのでしょうか。
なんと、王家の宝物でも貴族の財産でもなく、市民が寄贈したコレクションなのです。
館名にもなった実業家のペーター&イレーネ・ルートヴィヒ夫妻、弁護士のヨーゼフ・ハプリヒの寄贈品は、ルートヴィヒ美術館コレクションの礎となりました。
加えて、個人会員からなる「ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会」、ケルン市が設立した「ルートヴィヒ美術館芸術財団」といった組織が、現在の収集活動に市民の力を活かす取り組みをしています。
前者は個人が会員として美術館を支え、後者は寄贈に関心のあるコレクターを支援することで、美術に対する市民の思いをコレクション創出につなげているのです。
展覧会の随所には、コレクターに言及した解説文が散りばめられています。
さらりと触れられているようにも見えますが、彼らの貢献なくしては、豊かな作品群が生まれ存在し続けることはできませんでした。
第二の主役でもある“市民”にも思いを馳せると、鑑賞がいっそう感慨深くなるでしょう。
混雑状況
会期序盤の平日昼頃に訪れた際は、拍子抜けするほど空いていました。
大きな作品が10点以上あるような広い展示室に数名しかいないくらいです。
作品の真正面に陣取ってウンウン眺めていても誰にも迷惑をかけない、なんとも贅沢な状況でした。
平日とはいえ驚きです。
ただし、もしかすると、梅雨明け直後のひどい暑さで外出を控えていた人が多かったのかもしれません。
土日や夕方、涼しい日などはもう少し混雑する可能性はあります。
また、会期末は一般的に混雑する上、涼しくなってくる時期なので、想像以上に混雑するかもしれません。
何にせよ、早いうちの方がゆったりできるのは間違いないかと思われるので、ぜひお早めにどうぞ。
【8月18日追記】
8月18日現在、やはり混雑していると言う声はほぼ聞かれません。
ゆったり楽しめそうです。
内容は充実しているので、興味があるなら躊躇せず行くべし!!!です。
所要時間
本展の所要時間じゃ、人によってかなりばらつきが出そうでした。
一点一点じっくり見つめている人もいる一方、サーっと通り過ぎていく人もまあまあいたように思います。
現代美術が刺さるか刺さらないかの差なのでしょう。
混雑しておらず、「この作品はどんな意味だろう?」と立ち止まって考え込めるので、現代美術に興味が持てる人には時間がかかる展覧会になりそうです。
一応の目安は、音声ガイドなしで1時間半くらいとしますが、前後しても大丈夫なようにスケジュールを組むようお進めします。
チケット・事前予約
当日券と日時指定券の両方が用意されています。
最近の多くの予約制展覧会と同様に、当日券は数量限定、日時指定券はオンラインとプレイガイド(コンビニ販売・発券)で購入できます。
今回の日時指定券は、オンライン・プレイガイドともに変更・払い戻し不可、販売開始日時は同時に設定されています。
ただし、オンラインだと入場時間枠の開始直前まで購入できるのに対し、プレイガイドだと前日の23時59分までです。
急に行きたくなった場合は、オンラインか当日券のどちらかになるかと。
なお、指定の時間枠は30分ではなく120分で設定されています。
※最後の時間帯は90分
当日券が完売した場合は公式Twitterで告知されるので、狙う場合は確認しときましょう。
Tweets by LudwigExhn【8月18日追記】
8月18日現在、当日券にも事前予約券にも余裕があるようです。
本日は木曜日なのですが、今週末のすべての時間帯で事前予約券が購入できる状態です。
会期末にかけて購入しづらくなるかもしれませんが、希望の日時に行ける可能性は高いと思ってよいでしょう。
予習におすすめの書籍
今回も、予習におすすめの1冊を、我が家の書棚から選んでみました。
『【カラー版】20世紀の美術』です。
タイトルからしてズバリですね。
マティスの表現主義・フォーヴィスムから2000年代頃までの美術全体を取り扱っていて、全体像や流れを概観できるようになっています。
サッとでも目を通してから展覧会に臨むと理解が深まるはずです。
ありがたいポイントは、著作権料が大変だったのでは?と思うほど図版が多く、しかも全てがカラー印刷な点。
また、主要な様式・グループ等について、何に影響を受け、次の何に影響を与えたのかを、ダイヤグラムとしてまとめてあるのも親切です。
解説文はどうしても抽象的になりがちですが、図版が読み解く手がかりを与えてくれるので大事ですよね。
あまりに多様すぎて1冊では到底理解しきれないのが20世紀美術ですが、これからいろいろな表現に触れていきたいのであれば、この本が手元にあると後々にも役に立ってきます。
もっと知りたいジャンルが見つかったら、巻末の参考文献が深掘りする手がかりになりますし。
ということで、おすすめ書籍は『【カラー版】20世紀の美術』です。
余談:熱中症と室温に注意!!
今年の夏は暑くなりそうですね!
暑い日に注意したいのが熱中症と展示室内の温度の2点。
熱中症対策としては、日比谷線・大江戸線の六本木駅ではなく千代田線の乃木坂駅を使うのが有効です。
一応美術館直結ということになっていて、屋外を少し歩きますが、六本木駅よりも段違いに楽に行けますよ。
そして展示室内の温度にもご注意を。
作品保護のため、展示室はかなり涼しくなっています。
冷え性の方は軽く羽織れるものを持ち込みましょう。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
ルートヴィヒ美術館展
20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション
国立新美術館
2022年6月29日(水)~9月26日(月)
特設サイト:https://ludwig.exhn.jp/
【巡回】
京都国立近代美術館
2022年10月4日(金)~2023年1月22日(日)